狼王子
涙を拭って行ってしまった海十の後ろ姿を見る。

学校でも人気のある海十。
いつだって横に居た。
気づいた時から。
確かにかっこいいと思う。
でも特別な気持ちは無い。
好きだけど友達として。

ぐいっ
後ろ姿を見ながら
想いにふけってたから菅原を忘れてた。

怒ってるだろう。
もう出て行けって言うかもしれない。
それくらいのことをしたのだから。
自分のこと好きなやつに抱きしめられてたんだから。
あきれてるかもしれない。

引っ張られて付いていくのに精一杯ながら
そんなことを考えてる。
…考えるだけで涙が出る。
こんなに好きなのに離れ離れ。
この気持ちを伝えられるいい言葉が無い。
見当たらない…。

家まで一度も後ろを見ずに引っ張られてる。
それも涙を誘った。

家の中に入る時も、もうちょっとで靴のまま
入りそうだった。

菅原の部屋に引っ張り入れられて
ベットの上に押し倒される。

じっ。と見る瞳に涙がこみ上げてきた。

「…ふぇっ……」
わーん。と声を上げて泣く。
心も顔も痛かったから。

急に触れた何かに
ビックリして涙も引っ込んだ。

「!?」

ちゅ、ちゅ、ちゅ。
顔を何度も何度もキスしてくる。
手を押さえつけられてるから
されるがまま。

「なッなに。」

ちゅ。
最後は唇に優しくキスをして

「…消毒」

「……しょ、しょうどく?」



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