キ ミ イ ロ













箸が真新しい。

机の下で、ギュッと強く拳を握った。
俯いて、下唇を噛む。






──・・・ダメだ。
自分はここにいちゃダメだ。



「……寝る」


静かに席を立った。
イスがスッと音を立てる。

「体調、悪い?」


「………悪い」

体全体が痛かった。
節々がドクドクした。




ゆっくりリビングを出て、階段を上がろうとしたとき
突然視界が揺れた。


──・・・倒れる?






痛みはなかった。
体が床に打ちつけられる音も、感覚さえない。


だけど、薄ら目を開ければ
何故か、心配そうな櫂兄の顔。




優しい顔、優しい目。


その顔に、その目に、すごく安心して、ゆっくり、目を閉じた。




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