キ ミ イ ロ
櫂兄に連れられて、とある河原に来ていた。
「ここがよく見えるとこっ」
まだ少し明るい空を見てそう言った。
「……涙、花火観たことあるでしょ?」
「…一回しかない、四年くらい前に」
そう答えた自分に、櫂兄は驚きの顔を向けた。
「一回?!四年前?!」
「……うん」
──・・・驚きすぎだろ。
だって、花火を見ると思い出すんだ。
お父さんを。
だからずっと、花火に背を向けてきた。
泣くことにも、愛にも、
家族にも。
「なんかイヤな思い出があるとか…?」
「…まあね」
『また観に来ようね』
約束、したのに。
「…じゃあさっ」
櫂兄はいきなりかしこまった声で言う。
「今年の…、今日の花火は、一番いい思い出にしよっ!!」
そう言って笑って、あの笑顔で。
「………うん」
いつの間にか櫂兄の笑顔が、
櫂兄の隣が、
心地いいと感じていた自分がどこかにいた。