キ ミ イ ロ
櫂兄にバレないように、そっと涙を拭った。
と、そのとき
キュ、と
手が握られる。
その手は紛れもなく櫂兄で。
櫂兄を見れば、花火に釘付け。
櫂兄の小さな気遣いがすごく嬉しくて。
──・・・今なら、
今なら。
言えそうな気がしたんだ。
今の自分が、櫂兄に言える一言。
「……ありがとう」
それは花火の音にかき消されたけど、
一瞬だけ、たった一瞬だけ、
握られた手が、ピクンと動いた気がした。