キ ミ イ ロ













「……前の、お父さんが死んだ。昨日」


「えぇっ?」



驚いている櫂兄。
無理もないけど。


「お通夜とか、葬式とか、行かなくていいわけ?」


「……行かない」


「お母さんは?」


「たぶん連絡入ってる」



櫂兄は何故かテンパってて、それに笑える。

なに櫂兄がテンパってんだか……




「涙、お通夜だけでも行ったら?」


「………行かない」


「だってお父さんだろ?」


「…………行かない」





──・・・ああ、重症だな、と思った。
櫂兄になんと言われようと、行かない、って貫き通す自分を心底笑った。





そこまであいつを、
親父を
お父さんを、自分は恨んでいたなんて。




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