キ ミ イ ロ













しばらくして、お母さんも『お父さん』も帰って来た。


それから、お母さんの車に櫂兄と乗ってある斎場に向かう。




いつもは真っ暗な斎場。
だけど今日は明るく光っていた。



お母さんも一緒に来て、お焼香だけをやろうとして斎場に入ったとき、





「……お父さん…」


艶のある額縁の中に、微笑みを浮かべる男の人。




確かに、それはお父さん。


お母さんはなにも言わない。
写真を見る仕草さえ、見せなかった。





──・・・お父さん。

久しぶりに見た。



「涙、行っといで」


耳元でそっと言った櫂兄。
櫂兄は斎場から出て行った。




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