キ ミ イ ロ
「…それだけ、訊きに来たんだけど」
──・・・最近。
「……ある、夏休み中に」
あのときは櫂兄が支えてくれて。
「どんなときだった?」
「……階段を上がろうとしたとき」
……ふらっと。
そう答えると、その先生はカルテになにか書いていた。
そして
「僕、阿藤。たぶんこれからいろいろ涙ちゃんに関わると思う。よろしくね?」
と言った。
「……敷浪涙、高一、です」
──・・・思い出した。
『敷浪櫂、高二、です』
櫂兄と初めて会ったときのこと。