キ ミ イ ロ













──・・・夕暮れ時。



「涙、お見舞いだよ」
櫂兄の声。



中を伺うようにカーテンが開く。


「……よっ」





──・・・愁。


「じゃ、ごゆっくり」


「すみません」



櫂兄はいつもの笑顔で出て行った。






「……来てくれたんだ?」


「…当たり前」




夏の終わりをつげるヒグラシの鳴き声。


「……早妃たちは?」


「明日二人して来るらしい」


「……そっか」




オレンジ色が差し込む病室、カーテンが風でなびく。



「涙、一週間だっけ?入院」


「…そうだよ、飯がマズくてマズくて最悪」



そう言えば愁はクスリと笑う。




< 149 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop