キ ミ イ ロ
──・・・夕暮れ時。
「涙、お見舞いだよ」
櫂兄の声。
中を伺うようにカーテンが開く。
「……よっ」
──・・・愁。
「じゃ、ごゆっくり」
「すみません」
櫂兄はいつもの笑顔で出て行った。
「……来てくれたんだ?」
「…当たり前」
夏の終わりをつげるヒグラシの鳴き声。
「……早妃たちは?」
「明日二人して来るらしい」
「……そっか」
オレンジ色が差し込む病室、カーテンが風でなびく。
「涙、一週間だっけ?入院」
「…そうだよ、飯がマズくてマズくて最悪」
そう言えば愁はクスリと笑う。