キ ミ イ ロ













考えても、出てくるわけがないことは知っていた。


だって、
その答えは愁だけが知っているように見えたから。





「涙っ」


明るい声で入ってきた櫂兄。
櫂兄を見たときに、自分の中のなにかが震えた気がした。




「さっきのは……」
そう言いながら目を泳がせる櫂兄。
愁を彼氏とでも?



「…愁、友達」


「友達…?ホント?!」




何故か驚く櫂兄。

「……なんで?」


「いや、てっきり涙の彼氏さんかと思って……」





──・・・んなわけあるか。


「……ないよ、愁は」


「そう?」




『好き、だよ』


あの海のとき。
愁が言っていたことを不意に思い出した。






『大切なもの、見失うなよ』




愁、教えて?





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