キ ミ イ ロ













ただ、愁に謝りたくて。
枕元にあったケータイを握って、着信履歴を見て、『愁』の名前を押す……ところで手を止めた。




謝ってどうする?




その考えが頭を駆け巡る。


「…………」




──・・・だけど。
写真を握りしめながら、ケータイの発信ボタンを押した。






やがて聞こえてきたのは無機質の機械音。


一定のリズムを刻む音は、なんとなく心をざわつかせた。






そして、
「…はい?涙?」


──・・・愁。




「……愁、」


いきなりごめん、そんなことは言わずに、ただ謝りたくて。




「……涙?どうした?」


「ごめん」


「……なにが?」


「…………聞いてやれなくて」




無意識に、声が震えてしまう。




< 219 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop