キ ミ イ ロ
「……櫂兄、これ」
──・・・ヤバい、泣きそう。
普通のサイズより小さいペアリング。
小さな箱の中、白い光に照らされてキラリと光った。
「……涙、手貸して」
そう言われて、そっと櫂兄が左手を掴む。
──・・・そしてそっと、片方のリングを左手の小指にはめた。
「……櫂、兄?」
櫂兄の顔が見えない。
見たいのに。
いま、どんな顔してる?
ねえ櫂兄、顔、見たいよ。
「……ピンキーリング、涙に似合うと思って」
もう一つのリングは櫂兄が右手にして、
「………ねえ涙、あのさ」
「……うん」
「お願い、あるんだけど」
──・・・まだ、櫂兄の顔が見えない。