キ ミ イ ロ













止まる気配のない涙を、櫂兄が一粒ずつ拾った。


「………ごめん、いきなり」






違う。




だから


「……今日は、帰るな」






行かないで。
まだそばにいて。


離れたくない。




「…………っ」






言わなきゃ。


櫂兄に、言わなきゃ。




──・・・櫂兄、


立ち上がる櫂兄の上着の袖を、ギュッと掴んだ。





そのとき、
やっと櫂兄の顔が見えた。




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