キ ミ イ ロ
見慣れないリビング。
前のマンションのときより、増えたイス。
ああ、そっか、と思い直す。
机の上には、なぜか豪華な料理。
─・・・お母さんが?
そんなはずない、だって、
だって、
再婚する前は…
机の上に置かれた紙。
『買って食べてね』
と、札が一枚。
そのせいで、夜遊びして、
そのせいで、
酒だってやったんだ。
そんな、冷たいヤローが。
料理を振る舞ってるなんて。
手に持っているケータイを握った。
そのあと、お母さんに近寄って
「……ちょっと外出るわ」
とだけ言いつけて、
机の上にある料理を見ずに
外に出た。
お母さんは何も言わなかった。