キ ミ イ ロ













バッと入口を見た。

「……愁」



追い掛けて来たのか、息を切らしながら。
ホント、櫂兄みたいだ。


「何してんだよ!!」


走って寄ってくる愁。
拒みはしなかった。


「……なにも」


急いで血が滲んだ腕を隠した。

愁は泣きそうな顔をして



「…見せて」

と腕を引っ張った。


見られたくなかった。
リストカットの痕、
血が滲んでる。



「イヤだ」


目を逸らしたくなるほど、愁の目には涙が溜まってた。




「……涙、ごめん」


──・・・なんで愁が謝るんだよ。
なんで愁が、



「……なんで、」


泣くんだよ。




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