ただ、声をあげよう。
田舎の夜は雲が厚くてぬるい風がぶうと吹き付ける。


旧型の扇風機がゆったりと首を振って生あったかい空気をかき回していた。


9時を少し回ったところで寝るには早いけど、じいちゃんちの夜は早い。

テレビもラジオも消されて静寂があたりを満たしていた。

ばあちゃんの部屋に無理やり3人分の薄い布団を引いた。


「こげん狭いところに無理やり寝ることなか」

「いい、じいちゃんとばあちゃんの真ん中で寝る」


部屋のはじからじいちゃんは大きな蚊帳をつった。

薄青の蚊帳にもぐりこんであたしは目を閉じる。

隣からばあちゃんの寝息が聞こえる。


「美幸」


名前を呼ばれて身動きした。


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