ただ、声をあげよう。
じいちゃんがあたしの手からリモコンを取り上げた。

センサーをテレビに向けてボタンをいらただしげに押す。

何度も何度も。

音声が大きくなってアナウンサーの声が聞こえてきた。


「これはニューヨークで現実に起きた映像です」


画面が切り替わって、高層ビルが上から崩れおちていった。


「崩壊」って言葉がある。

崩れ、壊れる。

語感の強い熟語だから、あたしはこの言葉が好きじゃない。

完膚なきまでに叩きのめして、再生の余地のない言葉だから。


今テレビから送り出される映像はまさに「崩壊」だった。


世界貿易センタービル。

ニューヨークのシンボルというべきツインタワー。

他のビル群の中でその存在を誇示するように二つのビルがにょきりと飛び出していた。

どんな写真を見たってこの2つはニューヨークの青い空をバックに胸を張って誇らしげに立ってる。


他のビルたちを従えるように。


そのビルの南塔が上から屈服するように崩れ落ちていく。


じいちゃんが玄関に新聞を取りに行った。


一面をひっくり返す。


そこには信じられない文字が躍ってた。







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