ただ、声をあげよう。
じいちゃんと2人でばあちゃんを着替えさせて蚊帳の中に寝かせた。

扇風機をつけて風の向きをばあちゃんの足元に固定する。

ゆったり首を振る扇風機の横で、あたしはうちわでばあちゃんを煽ぐ。

しばらくゆっくりと風を送っているとばあちゃんは静かに眠っていった。


口を半開きにして、撫で付けた前髪が乱れて汗で額に張り付いていた。

薄いタオルケットをかけなおしてガーゼで額の汗をぬぐった。


―ばあちゃんってこんなに小さかったっけー



あたしはばあちゃんの背中に負ぶわれて、畑に実るきゅうりをもぎ取っていた。

あたしをネンネコに包んで畑仕事してた背中はこんなに狭かったっけ?

迷子になったときは、ばあちゃんがデパートの案内所に迎えにきてくれて。
泣きながら握った手はこんなにしわしわだったっけ?



「美幸」


じいちゃんが縁側から手招きした。


「スイカ、食わんね」


じいちゃんはでっかい出刃包丁でざっくりとスイカを半分に割った。

丸々一個は3人で食べるのには多すぎるけど、じいちゃんはかまわずに全部を切り分けてお盆に盛り上げた。

縁側から庭を見ると、大きくなりすぎたスイカやきゅうりが畑にごろごろ転がっていた。



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