ただ、声をあげよう。
「昨日、ばあちゃんが電灯におおいかけとったじゃろ。あれもな、灯火管制っていってな光を漏らさんようにしとったと」

「なんのために?」

「電灯の明かりが漏れたら敵の標的になる、そう言われとった。
だけどな、美幸。普通の家のな普通の電気ひとつでB-29の標的になるほど、明かりが漏れるとは思えん」

「だったら」

「これも今だから言えることだけどな、
あれは隣組の人間でお互い監視するためにやらせとったことじゃと思うと。明かりを漏らしてる家は非国民ってな。
そう思わせてお互いを監視しあわせて戦争の雰囲気を高めとったと。そう思うたい」


つい50何年か前の日本の異常さが目の前に見えるような気がした。

「ばあちゃんは、戦時中のことだけは忘れん。なんもかんもがあん頃のこと思い出させるんじゃろ。今日も昭吾のこと思い出したんじゃろうな」


じいちゃんもばあちゃんもそんなことは今までおくびも出さなかった。


いつもおいしい野菜を出してくれて、ばあちゃんはおいしい田舎料理や鬼まんじゅう作ってくれてにこにこ迎えてくれてた。

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