ただ、声をあげよう。
じいちゃんはぼそぼそと続けた。

「昭吾もわしも特攻だった。あの日な、突撃命令が下った最後の夜、それまでなんも言わんかった昭吾が自分の家族のこと、ぼそっと話した」


じいちゃんは油紙の包みを開けた。


「わしはまだ独身で家族はかあちゃんだけだった。昭吾は若くして結婚しとってお前の父さん、豊と美和っていう双子の子どもの父親だった。
最後の夜に家族への手紙ば書いて軍の上層部に提出したと。
だけん、検閲に引っかかって書き直しとった。立派に死ぬいう内容に」


油紙の中から古い軍服を着た若い男の写真が出てきた。

じいちゃんはそれをあたしのほうに向けた。


「だけど、わしは知っとる。昭吾は生きて家族のとこに帰りたかったと。
いろは順に突撃命令が下ってわしは昭吾の5番あとじゃった。
昭吾はわしにこれを預けた」


紙包みを開けると古い和紙に包まれた3束の髪の毛が出てきた。



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