ただ、声をあげよう。
「美幸。今日は帰るんじゃろ」


「うん、あたしも愛した人のところに帰りたくなった」



「生意気いうな。まだお前はガキじゃろが」


「あたしももうお母さんだから。守るものがあるから」


「美幸。声、あげえよ。
世間がな、おかしくなりそうになったらまず声あげえ。
わしらは声をあげれん時代じゃった。
今はいやなものはいやといえるじゃろ。
お前たちが守るものは何か、よう考えて声あげえ」



「わかった。じいちゃんの説教、忘れんとく」



「野菜持ってけ。で、たくさん食うて丈夫な赤ん坊生んでくれ」



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