ただ、声をあげよう。
受話器を上げるがちゃっという音のかわりにちん、と音が聞こえた。


「はい、もしもし」

「じいちゃん。あたし。美幸」

「あたしって、誰ね?」

「だから、美幸だって」

「美幸はここにはおらんよ」


また、ちん、と音がして電話が切れた。



―じいちゃんめ、あたしのことからかっとるー



あたしはリダイヤルボタンを押して、またじいちゃんちの電話を鳴らした。

30回以上コール音を聞いて、ちん、という音がするかしないかの刹那にあたしは先に声を出した。

「もしもし、じいちゃん。美幸、じいちゃんの孫の美幸だって。バス停に来とるで迎えに来て」


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