ただ、声をあげよう。

ばあちゃん

庭の一角にある畑には色とりどりの野菜が実をつけていた。

モロヘイヤ、ゴーヤ、きゅうりの緑色、とうきびとパプリカの黄色、トマトの赤。

どれもたわわに実ってる。

じいちゃんとばあちゃんの自慢の畑だ。


あたしは飛び石を一つ一つ踏みながら畑を突っ切り、じいちゃんちの玄関をくぐった。

今年のお正月には来なかったからここに来たのは1年半ぶり。



「なんで来るなら来ると言わんね」


じいちゃんが麦茶をお盆にのせて、和室に入ってきた。

風通しのいい和室の床の間には、籠にバナナとぶどうが盛り上げてある。



「なんでってかわいい孫が来たら嬉しいもんだが?」


あたしはぬるい麦茶を一気に飲み干す。


「腹ん中に赤ん坊抱えてこげん遠くまで来んじゃろが。おおかた明生くんとけんかでもしたとじゃろ」


―じいちゃん、伊達に長生きしとらんなー


図星だった。

あたしが思うように動かなくなってきた体をもてあましてる間に明生は仕事、仕事で毎日帰りは遅いし、家事を手伝ってくれるわけでもないし。

かといって、定年後の出向で大阪に転勤してしまった父さんと母さんのところまで帰るには遠すぎるから、あたしはここにやってきた。


じいちゃんの作った栄養たっぷりの野菜とばあちゃんの料理と鬼まんじゅう。
それを食べたら頭も冷えるだろう。


「今日は台風が来る。たいしたもんはなかけんど泊まってけ。その前に仏壇に線香と燈明あげえ」


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