魔女の小さな手の上で
今朝の朝食は胡桃と菜の花、野菜を使ったサラダにパンにトマトスープだった。
「ティスカの料理は旨いな」
「えっ!?」
半分ほど食べた所で改めて口にする、ティスカは見た所まだ十代半ばだろう、なのにこんなに手の込んだ料理を一人で作るのは凄いと思う、しかも私みたいな男を看病して。
「それにその年で自立していて立派だと私は思うな」
素直に思った事を言い、止まっていた手を再び動かし始めた、チラリと向かいに座るティスカを見ると何故か手は止まり俯いている。
「どうした?どこか調子でも悪いのか?」
不安に思い手を伸ばし背中をさすってあげ驚いた、彼女の背中が思った以上に小さく華奢だったのだ。
「ち、違います」
微かに声が震えポタポタと木製のテーブルに染みが出来た。
「ティスカどうした!?どこか苦しいのかい!?」
涙を流すティスカに一瞬パニックになる、私は何か気に障る事でも言ったのだろうか。
「違うんです」
今度はしっかりとした声で言い、伏せていた顔を上げるティスカの表情は苦痛に歪んではいなく寧ろ穏やかに微笑んでいる。
「誉めていただいて嬉しいんです」