魔女の小さな手の上で
三日目
「アスターさん!見てください!!」
外から楽しそうなティスカの声で呼ばれ読んでいた本に栞を挟み閉じ、立て掛けている松葉杖を使って外に出る。
あれから数日がたった。
実に穏やかな日々を過ごしている、不思議と記憶を無くしている事に不安や恐れなどがまったく湧いてこない。
ティスカの看病と薬のおかげで私でも驚く程早く回復し今では松葉杖があれば歩き回る事が出来る。
外にでれば穏やかな風が吹き抜け太陽の光が眩しい。
「アスターさん早く早く!」
目を向ければ少し離れた所で楽しそうに笑顔で私を手招きするティスカがいる。
彼女も最初に比べ随分私に懐いてくれた、最初は近づくと肩を跳ねらせ緊張していたのに今では彼女の方から話しかけてくれる。
ティスカは黒いワンピースの裾を片方で結び纏めて髪は一つに縛っていた。
「どうかしたのか?」
何か楽しいことでもあったのだろうか。
「実はですね」
ニコニコしている彼女の後ろに何かがある。