年下騎士
――――――――――

席を空けてくれた住吉香に、俺はお得意の笑顔を向けた。



でも、住吉は思った通り、顔色ひとつ変えなかった。


「…それは、心からの笑顔ですか?」


「え?」



空耳…?

住吉はノートを鞄につめながら、ボソッと呟いた…ような気がする。



心からの笑顔…?

住吉は俺を見抜いていた。
濁りのない綺麗な瞳で果てしなく俺の心を。

空耳かと思ったが、確かに呟いていた。



「ごめん。今なんて?」

「いえ。なんでもありません」



確証を掴むためにもう一度聞いたが、
それ以上彼女は口を開かなかった。


ふいに、


「一緒に勉強しないか?」



俺の口からとんでもない言葉が出ていた。


机から離れようとしていた彼女は、目を丸くした。
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