年下騎士
それから毎日、彼女と図書室で勉強するようになった。

意図的に彼女は毎日図書室にいるのか、もしくは本当に毎日図書室で勉強するという習慣があるのか。それはまったく俺には分かるはずもなく、俺は彼女に会いたいから今日も図書室へと向かう。


なぜ会いたいか…そんなの俺には分からない。分からないけど、毎日彼女に会うたびにこの一定のスピードに保たれた鼓動は加速する。


放課後のチャイムが鳴るのと同時に教室を飛び出して、周りに愛想を振り撒きながら彼女の元へ行く。


「住谷さん」

「あ…先輩。こんにちは。」


彼女は英語の教科書を読んでいた。その顔を上げて肩までかかった髪を耳にかける仕草に、またまた俺の鼓動は速くなっていた。


そして、また彼女は言う。




「英語の訳で分からないところがあるんです。今日も教えてくれますか?」




透き通る綺麗な瞳で俺をじっと見つめながら顔色を変えずに。
甘ったるい声を出して上目使いで俺に話しかける奴とは違う。
だけど、分け隔てなく人と付き合えて、彼女を慕う人も多い。
リーダー的な役割を任せられる事から「お姉さま」キャラと影では有名だ。


「もちろん。どこ?」


彼女が気になって、委員会室で男子たちが話している話をよく聞くようになった。
もちろん、話には加わらずに席について資料を見るフリをしながら。
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