年下騎士
数秒、
彼女は固まっていた。いや、俺と視線を合わせた瞳は微かに震えていた。


何も言わない彼女にゆっくりともう一度言う。何かを確かめるように。



「本当の君を見せてくれないか?」



「…………な・・んで……」


震える唇から紡ぎだされたのは疑問の声だった。
もう一度言おうとすると、彼女は続けて話した。


「…嫌・・です……だって・・そんなこと・・したら、先輩は・・私から、はなれ・・てしまう……」


力なく呟く彼女を、俺は愛おしく抱きしめた。
俺は理解した。




彼女を見るたびに鼓動が加速した理由を。



「せん・・ぱい…?」






彼女に恋をしていたんだ。
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