最高級の召使
その時がやってきた。

海の向こうが真っ赤に染まった。


体が震えだした。



ここに未練があるとしたら
倉之助にもう一度だけ会いたかった。


それも今ではかなわないから
私はきっとつめたいだろう海に
向かって歩き出した。



後戻りできない
今度生まれるときは
お金持ちじゃなくていいから

ふつうに
いつも両親がいる食卓で
ふつうに暮らして
片思いをして
愛して愛された人との
未来を想像できる人生であってほしい




つめたい・・・



長靴に水が入り込んだ。
歯がガタガタ鳴りだした。

きっと胸までつかれば
心臓が麻痺してくれる・・・・
怖いのはきっと今だけだから・・・・
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