最高級の召使

父と連絡が取れたのは
夕方だった。


「楓、ありがとうな。
井上さん、すっかりおまえを
気に入ってくれて。
パパも救われるよ、本当に感謝する。」


「ちょっと、何のこと？
私はお付き合いはしないって
お断りしたのよ。
どうして私の人生を簡単に
決められないといけないの？」



「楓・・・
今さら何を言ってるんだ？
おまえは一人娘だ。
この間もその話はしただろう。
わかってくれていたと
思っていたのに。」



「わからないわよ。
私は自分の人生に絶望して
自殺したのよ。
死ねなかったけど・・・・。
今は後悔してない。
生きていたからまた会えたんだもん。」



「何の話だ。」



「とにかく一度帰ってきて。
私は絶対にいやだから。
あんな冷たい男絶対にいや！！」


「井上さんは、おまえを
妻にしたいって言ったんだぞ。
井上さんには莫大な財力があるんだ。
おまえだって
有栖川家だってこれから
何一つ困ることはない。
やりたいことができるんだ。」



「パパは日本語わかんないの？
絶対いや！！」


電話を思いっきり切った。