最高級の召使

障害

倉之助が留守の間に
マンションに通い荷物を運んだ。



運転手が車に積んでくれたから
思ったより早く
引っ越しはすすんだ。



「楓さまは、後悔しないのですか？
今なら欲しいものは
すべて手に入ります。
生活にはなんの不安もない生活です。
小田島さんは、ふつうの方です。
私たちと同じ・・・。
もしかしたら家計のために
楓さまも働くことに
なるかもしれない。
うちの妻のように子供を抱えながら
髪の毛振り乱して
生きていく事ができますか？
それが幸せだって思えますか？
現実は厳しい・・・・・
今の世の中甘くないのを
楓さまは知らない・・・・・」

運転手は言った。


「未来に愛がない人生が怖いの。
私は、ここにいたら
好きでもない人と結婚して
その人の子を苦しみながら産んで
幸せじゃないのに
子育てをするのがいやなの。
なんのために生れてきたんだろうって。」



運転手は


「人間って愛だけじゃありません。
時には、愛するものを守るために
それが間違ってても
金に従わなければいけないこともある。
愛だけじゃ生きていけない
皮肉なことがこの世には
たくさんあるから・・・・」


そう言った。


心になぜか響く言葉だった。