宝石色の幻想
第三話
蒸し暑い。柏木はそう零した。
クーラーは理想の室温である28℃に設定されているが、先程まで重たいビニール袋を手に提げていた身はまだ外の熱で火照っている。
本人のお気に入りの白のポロシャツは、汗によって模様が描かれていた。リビングの床の上に寝転がり、団扇で精一杯涼を得ようとする姿に、ソファに腰をかけていた柏木の妻が苦笑する。
「暑いなら下げますよ?」
そう言ってリモコンに伸ばす手を柏木が遮る。
「お前の体の方が大事だ。それにもう、お前だけの体じゃないだろ?」
曲線を描く、大きくなった妻のお腹を、柏木は熱くごつごつした手で撫でた。愛おしそうに、幸せそうに。