宝石色の幻想


実際に柏木は幸せをひしと感じている。愛しい妻と結婚して四年、こうして子宝にも恵まれた。元は喫煙者であったため禁煙するのに苦労はしたが、その苦労も苦ではなかった。

愛妻家と評判の夫を持つ妻もそれは一緒で、この幸せの一時を甘受していたのである。


そこで突如鳴り響いた着信音。柏木の携帯だ。

扇ぐ手を止めて機種変更したばかりの青い携帯を取り、画面を確認する。妻は柔らかに微笑み、電話に出て下さいと告げた。

その表情から察するに、浮気など微塵も疑っていない。物分かりのよい妻で良かったとしみじみ思い、岩塚蒼空音からの電話に応えた。


< 15 / 58 >

この作品をシェア

pagetop