宝石色の幻想


執拗に繰り返された行為が突然止んだ。少女は涙を手で拭いて、恐る恐る背後を見る。

そこには中年男性と、その腕を高々と掲げた若い男性の姿があった。恐らく行為が止んだ原因を作ってくれた人だと、霞む視界の中、少女は感謝する。



次に扉が開いた時に、中年男性は二人の警察官によって連行された。ほっと胸を撫でる少女に、柏木は心配そうに声を掛けた。


「だ、大丈夫です!そ、その、本当に有難うございます。何て言ったらいいのでしょうか…」


駅に降りた少女は、何度も何度も深々とお辞儀をする。そのたびにスカートの裾をしっかりと握って。

柏木は車内でヒーロー扱いされただけでなく、可愛らしい女子校生にこんなにも感謝されて、照れくさくなっていた。けれど、嬉しくも思えた。



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