宝石色の幻想



その翌日。乗車駅のプラットフォームで、岩塚蒼空音と名乗る少女が、昨日痴漢に遭った少女と共に柏木のもとに来た。

岩塚も深く頭を下げ、感謝の念をしっかり表して、はっきりとした声で柏木に話しかける。


「この子、前から痴漢に遭いやすい体質みたいで前まではずっと私が守ってきたんです。」

そこには一切嫌味は含まれていない。

「でも私が今度高校の近くに引っ越すことになったため、電車を使う機会がなくなってしまいました。」

後ろにいる少女は何度か相づちを打ちつつ、上目遣いで柏木の表情を伺っていた。

「そうだったんだ。それは大変だったね。」

きちんと感情を込めて、柏木は後ろの少女に話し掛ける。すると少女の体は飛び跳ねて、ぶんぶんと首を縦に振る。何だか見ていると面白い。


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