宝石色の幻想
それからずっと、車内では美乃の側には柏木が居た。狭い車内で、人に揉まれながら、柏木は美乃を常に側に置いた。
会話も頻繁に交わした。学校のこと、会社のこと、クラスメートのこと、同僚のこと、蒼空音のこと。
最初はガチガチに緊張した美乃も、いつしか柏木にすっかり懐いて、柏木もそんな美乃に親しみを持ち始めた。年の差はあるが、異性の友人といったところ。
美乃は柏木のことを、柏木さんと呼んでいた。対応する柏木も藤沢さんと呼ぶ。
それがいつしか淳さん、美乃、といった関係に発展し、その頃にはただの友人を通り越して、もっと大事な何かになっていた。