宝石色の幻想
それはあまりにも衝撃だった。既婚者との恋だなんて、それは叶わないに決まっているから。
蒼空音はしばらく口を紡いだ。美乃の性格はよく理解している。恋愛には一途すぎる美乃。既婚者なら諦めよっか、はいそうですね、で区切りが付かないことなど分かりきっているからだ。
「私、諦めるね。叶うはずないもん。」
こんな台詞を言わせることが、蒼空音には辛かった。勿論、美乃だって涙を耐えて、辛い想いでこんな台詞を言っているのだ。
「無理になんて諦めなくていい。ゆっくり諦めていこう。まだ美乃も私も若いんだから。」
こんなことしか言えない自分が歯痒い。蒼空音は拳を握る。今すぐ会って美乃を慰めなきゃならないのに、すぐにそれが出来ない自分の位置にも苛立ちを感じた。