宝石色の幻想


美乃はそれきり、誰にも打ち明けることはなかった。蒼空音は、新しく好きな人が出来たの、と下手すぎる嘘に付き合わざるを得なかった。


まだ好きなんでしょう?
そう言えば、美乃は再び自分を責めるから。諦められない自分を恨むから。



ひどい罪悪感だった。柏木の無自覚な優しさが、更に美乃を苦しめていった。毎年貰える誕生日プレゼント、クリスマス。値段など関係ない。ただ愛しさが募る一方だった。


なのに、愛してもらえない。見返りを求めてはいけないのに。愛してもらえない自分が寂しい。こんなにも、誰よりも、柏木を想っているのに。


美乃の救われない片思いは後二年も続いた。



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