宝石色の幻想
いいや、違う。
私が本当に淳さんを想うなら、淳さんの幸せを願わなきゃ。自分なんかどうでもいい。淳さんが幸せなら、それでいい。
美乃が自傷行為に走るまで、そう長くはなかった。嫉妬する度に自分の腕を自分の爪で裂いた。仕舞には、柏木を想う度に全身を痛めつけた。
それでも美乃はいつも笑っていた。腕を隠してばれないように。下手だった嘘は段々と磨かれていき、遂に蒼空音までも誤魔化せるようになった。
恋愛には様々な形がある。美乃の形は、自分を犠牲にする愛だった。それは愛だった。高校生が胸に抱くには重すぎる、愛だった。