宝石色の幻想



蒼空音が念願の志望校に合格した日。美乃は誰よりも喜びを露わにした。それを柏木にも伝えた。

その日が唯一、美乃が偽りの笑みを張り付けなくて済む日だったのかもしれない。




間もなく、三人は駅のプラットフォームに居た。柏木のお姫様護衛の期日も、いよいよ終わりを迎えたのだ。


「柏木さん、本当に美乃がお世話になりました。」

「美乃と一緒に居れて楽しかったから、お礼を言うのは俺の方だよ、岩塚。美乃もこれからは電車じゃなくてバス通学頑張ってな。」


卒業式みたいだ。蒼空音はこの別れをそんな風に感じていた。美乃は素直に泣いている。高校の卒業式以上の泣きっぷりだ。



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