宝石色の幻想
美乃はありがとう、と泣きながら、笑いながら、口にした。淳さん、大好き!と幼い子供が父に言うように、そう告白した。
「これからも俺は美乃のことを応援してる。何かあったらまた此処で会おうな。」
不思議な関係だった。師弟でもなく、友情でもなく、不倫でもない。でも無理矢理この関係に名を付ける必要もないのだろう。
蒼空音は先に帰ることにした。もし美乃に未練があるなら、果たすのは今しかないと思ったからだ。
だが、美乃は柏木に想いを伝えることはしなかった。柏木もまた、それに気付くことはなかった。
告白をして傷つくのが怖い。それ以上に、この名もない関係を壊したくない。柏木を困らせたくない。