宝石色の幻想
第七話




蒼空音は飛行機で二時間かかる土地で一人暮らしをしていた。大学生活は高校以上に忙しい。そう電話で美乃にぼやいていた。


美乃も女子大生になり、忙しい日々を送っていた。勉強に遊びに、大忙し。端から見ると大学生活を謳歌しているように見えたが、真相は別のところにある。


多忙で柏木を忘れようとしていた。多忙でしか忘れられなかった。


新たな出会いも、恋愛に発展しない。皆次々と恋人が出来る中で、自分だけは未だに抜けられなかった。美乃はまだ柏木を想い、苦しんでいた。


それが一月経ち、二月経ち、いくら出会いが重なっても、柏木が頭から離れる日はなかった。

会いたいが、会ってはならない。それも重々理解していた。



< 41 / 58 >

この作品をシェア

pagetop