宝石色の幻想
友達にも明かせず、結局遠く離れた蒼空音にも言えるはずがなかった。心配なんて掛けたくない。それよりも、まだ止められない自傷行為の存在を隠さなければならなかった。
奥さんの存在が憎くなったら。自分を戒めるために食を絶った。柏木の幸せが崩壊すればいい。そう願う自分が誰よりも汚くて、愚かで、最低。そんな日はOD(※薬の大量服用のこと)。
気が狂いそうになった。その日は親に内緒で心療内科に言って、精神安定剤を処方して貰った。会って間もない医師に自傷行為のことは言えず、軽い鬱病でしょう、との診断を受けた。
美乃は日に日にやつれていった。周りも気付いていたが、美乃の口は固い。それに、大学で疲れてるのかもね、と慣れた嘘を疑う者など居なかった。