宝石色の幻想
「美乃は何かに苦しんで、でも今は違う世界で幸せになっているんだね。」
「…なにに、くるしんでたって、おもいますか?」
蒼空音のカップを持つ手がわなわなと震え始める。
「それが分からなかった。だから岩塚に聞きたかった。岩塚なら知ってるだろうって。俺は美乃の苦しみを止めようって…」
「ふざけないで!!!」
ガシャン。
テーブルのもの全てが振動する。客一人居ない、まして店主もいない店内に、こだまする怒り。
「わかって、あげてよ…」
それを蒼空音が言うことが出来たなら。柏木への恋に苦しんだ結果の惨事だと、言える資格があるならとっくに言っている。
でも言えない。美乃は後悔の代わりに、願ってくれと言ったから。自分の死が誰も傷付けない幸せに繋がると、信じたから。