君が嫌いな夏
君が嫌いな夏


見上げた空は、青かった。


空が高いって、こういうことを言うんだなあ

なんて僕は、ぼんやりと思って

右手に下げたビニール袋を持つ手が、ゆるゆると、緩んだ。




見上げた空は、青かった。


あの灰色は、すっかり姿を消していた。


吹き抜ける風は、生暖かく、湿っぽく


もう、刺さるように鋭く冷えた風は、どこにも無い。



なのに心は妙に冷たくて


それがすごく、かなしくて




通り過ぎた季節が、そんな僕を、笑って、嗤った。







……季節は、夏


蝉が五月蝿い、夏


暑がりな君が嫌う、夏。







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