あわい恋と約束
『ねぇ、どんな仕事してるの』
「私立の三流大学の准教授」
本当は四流大学、私の母校である。
彼女は不思議そうに
『ほんと?』
中学時代しか知らない人は、
私の職業を聞くと
必ず [ほんと?]と聞く
確かに、自分でも
なぜ大学の教員になったか解らない。
明確な理由はなかった。
『ねぇ、専門は何?』
[ねぇ]、この言葉
甘えた様な言い方
昔も、そうだった。
私は、これが好きだった
久しぶりに聞いたが
やっぱり好きだ
『ねぇ、聞いてる?』
「聞いてるよ」
『だから、なに?』
「物理、粒子力学」
『へぇー』
『カミオカンデ?』
「そうそう、いっしょ、いっしょ」