キミのてのひら【短編】
ハルくんが
ボソッと
波と風にかき消されそうな声で
「なんか、死んでもいいかも」
風に舞い乱れる髪を押さえながら隣のハルくんを見た
ギュッと眩しそうに目を細め
沈む太陽と穏やかな冬の海
この世の終わりみたいな景色を
ハルくんは真っ直ぐ見つめ
「お前となら、
このまま死んでもいいかも」
今度は はっきりと言って
私を見た
目と目が合うと
なんだか おかしくて
「……ぶふっ」
ふたり同時に吹き出して
「あははははっ…………」
波にも風にも負けない声で笑った
お腹が痛くなって
涙も出た