【短編】君のすぐ隣で


「おっはー飛鳥ちゃーん」

「……南央うざい」


抱きつこうとした南央を片手で押し退け、心底嫌そうな顔をしている飛鳥。

じゃれあってる2人を見て、仲良いななんて思った。うん。


「早南、遅刻するよ」

「あ、うん」


あ、わ、やばい。

時間なくなっちゃう。

せっかく早起きしたのに、あんまり良いことがなかった。後悔した。

飛鳥に言われて、自室へと戻る。

壁に掛けてあった制服に着替え、携帯を持ちスクールバックに入れた。

そして急いで1階に降りる。


「あ、早南っ。飛鳥君と南央、もう外に行ったわよ」

「は、早い。行ってきますっ」

「行ってらっしゃーい」


お母さんに手を振って家を出た。

さっき顔洗ったときにチラッと鏡見たけど、寝癖ついてたよーなついてないよーな。

昨日お風呂から出て髪乾かさないで南央とゲームやってたからな。寝癖ついても仕方ないか。

玄関を出ると、既に2人の姿がそこに。


……と思ったら、飛鳥が1人でバスケットボールをバウンドさせていた。


「あ、早南来た。意外と早かったね」


私に気づいた飛鳥は、俯いていた顔を上げて少し笑って言った。


「うい。南央は?」

「先行った。女の子と一緒に」

「そか」


またか。またなのか。

数々の乱闘を今までにたくさん経験しているくせに、また女の子と一緒なのか。

呆れて溜息が漏れた。溜息つくと幸せが逃げるんですよね。もう好きにしてください。


「俺らも行くか」

「うん。………うわっ!」

わしわし、と頭を撫でられ、おかげさまで鳥の巣みたいになった。

不意に腕時計を見ると、時刻は8時ちょっと前くらい。やばい。遅れる。


「飛鳥さーん、時間やばいっす」

「え、まじで?……走るか」

「まさかの全力ダッシュ!?」

「仕方ない」


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