One Way Ticket 2
「あの人は俺がいない方が、楽だよ。
俺にいちいち気を遣わなくてすむだろうしな。」


吐き捨てるように那智は言った


そこには那智の傷痕が生々しく貯まっていた


「まだ、母さんや俺を恨んでるのか?」


良一さんが哀れむように那智を見た


どうして
そんな目で那智を見るの?

「関係ないだろ。
俺に干渉するな。」


「そうやって、那智は逃げてきたな。
俺の母さんや俺から。

そして、家を出るときも一言も言わずに、俺たちの前から姿を消した。」


そうだったんだ

那智は逃げるように実家からあのマンションに来たんだ


良一さんがまた、鼻で笑った


「はっきり言って、お前がいなくなってせいせいしたよ。

母さんはお前に怯えることなく、生活できた。」



那智の拳が震えていた


「ただ、その分…毎日毎日、寝る前にお前の母親の位牌に向かって、土下座して泣きながら謝っていた。


お前は知っていたか?

知るわけないよなぁ?自分だけ傷ついたような顔して、勝手に出ていった。
そんなお前になぁっっ!」

良一の拳が那智の右頬に入った
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