One Way Ticket ２

さらに良一さんに殴りかかった那智


止めに入ることもできた


だけど
止めちゃいけない

そう思った


これは那智の心の叫びだから…


｢あの日、俺がどんな気持ちで母さんを看取ったか、お前にわかるか？！

わかるのかよ！｣


馬乗りになった那智を良一さんが押し退けた


｢わからねーよ！
わかりたくても、わからねーよ！

だって、唯一それを知るお前は…俺たちに背を向けて、俺たちの差し出した手を全て払い除けたじゃねーか。｣



今、いまわかった


良一さんはずっと那智の気持ちをわかろうと

自分が那智を傷つけた事を謝ろうと思っていたんだ…

でも、それをずっと受け入れてもらえなかった…

那智はずっと
差し出された暖かい手を
拒否し続けて来た


｢俺は…。｣


両手の平を見つめて
混乱して
今までを見つめ直して

震えてる那智


私はそっとその手を両手で包んだ


｢那智…憎しみ続けていたら何も終わらないよ。
ただ、辛くなるだけだよ。
お母様が亡くなったその辛さを１人で背負い込んで、もう、苦しまなくていいんだよ？


その荷物を一緒に背負ってくれる人はこんなに近くにいるんだよ。｣


那智の瞳に良一さんが写った

その顔は見たこともないくらい優しい顔で


那智は少年のように幼い表情をしていた