にんげん賞味期限

しばらくしても拍手は鳴り止まず、気がつけばギターケースには彼女が投げ込んだ100円玉以外に両手では抱えきれないほどのお金が溜まっていた。



人を感動させるってこんな感じなのか?



清々しかった。



「はい、ありがとう!!」



僕はギターケースを傾け、全てのお金をビニール袋に入れ彼女に差し出した。



「なんですか?」



「いや、何ってこれは君が稼いだお金だろう?」



その光景を和也は羨ましそうに見つめている。



「いらないです、別にお金が欲しくてやったわけじゃないですから。」



僕はこの言葉をどのように解釈すればよいのか分からなかった。




「ほんとにいいの?」



「いいですよ。」



「…じゃあ、もらっとくね。」



すると、和也が何かを思い出したかのように声をあげた。




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